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冬が終わり、春かと思っていたらもう夏を思わせる季節になってしまいました。
今さら新春号でもありませんが、「土屋作庭所通信H27新春号」を載せます。
内容は新春に限らないことですので、少々長いかもしれませんが是非御一読下さい。
HPに作庭例も一つ二つ追加したので、そちらのほうも是非ご覧ください。

和風庭園か、洋風庭園か?

「土屋さんの庭は和風ですか?それとも洋風ですか?」と、聞かれることがあります。私が茶道をしていることを知ると「土屋さんは和風ですね」と、言われることもあります。和風庭園と言えば松があって石灯籠があって・・・・と、あるイメージが頭に浮かびます。また、洋風と言えばレンガ花壇に花が一杯という景色があります。質問してくださった方の頭に浮かんでいるかもしれないこの景色を、まず打ち消すことから始めなければと思いつつうまく伝えきれないことが多いので、今回はこの場でお答えすることにします。

まず、庭は誰のものであるかをはっきりさせる必要があります。もちろん持ち主ははっきりしていると思いますが、誰のための庭であるかというと、答えは一つではありません。そして、何のための庭であるかということも考えると答えは様々になってきます。考えやすい例としてひとつ挙げると店舗の庭があります。この場合その庭はその店のお客様のためにあり、そのお客様を楽しませるという、かなり明確な方向性があります。店舗といっても様々ですから一概には言えませんが、お客様を楽しませるためには、日常というより少しよそ行きの雰囲気を持たせ、ある程度“魅せる”ことの出来る庭が求められます。魅せる庭ということでは芸術性を追い求めた庭というものもあります。これは見に来た人のためか、作った本人のためのものか、判然としない時もありますが、この庭も方向性ははっきりしています。全国にある名勝と呼ばれる歴史的庭園の多くはここに分類されるでしょう。浄土形式と呼ばれる京都の浄瑠璃寺や奈良の大乗院、武家の作った三重の北畠館跡などは私も好きな庭園です。これらは作った当初に今で言う芸術をどこまで意識していたかはわかりませんが、その規模と歴史的価値から現代においては芸術の範疇に入れていいと私は思います。これら店舗の庭と芸術的な庭は個性が強く、評価対象にもなりやすいので、庭というとこういった庭を思い浮かべてしまうのですが、数でいえばむしろ小数で、多いのは住宅の庭です。ですが、この庭は多くの人が関わるわりには話題になりにくい。それは、多様であるということと、私的なものなので公には語りにくいという側面もあります。しかし、私の仕事の範囲は住宅の庭が多いので、この庭について思うところをつづってみます。

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店舗の庭 galrie そう(奈良市)


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芸術の庭 北畠館跡(三重県)


住宅の庭で大事なこと

1)住む人のため

もう一度、今度は住宅の庭は誰のものか、何のためにあるのか、という問いに戻ります。私邸の庭ですから、誰のものかは明らかですが、何のためにあるのかというとはっきりと答えにくいのがこの庭の特徴です。バーベキューをするため、草花を楽しむためといった、具体的な回答では答えきれないものがあります。もっと素直に、もっと簡単に答えるとすれば「住む人のためにある」と、なるでしょう。当たり前のことで、面白くも何ともありませんが、色々庭をみるなかで、ここはもっと大事にするところではないかと感じます。住む人のためにあるのだから、住む人が好きなようにすればいいのです。お客様を大事にしたければ店舗のように少し魅せる要素を取り込めばいいですし、外の目を完全にシャットアウトして家族専用にしてもいいのです。自分のものですから、誰に気兼ねもいりません。話は少しそれますが、以前に集合住宅の庭の整備を検討する機会がありましたが、住む人が定まっておらず、家主とも接点がなかったため検討が進まずに困ったことがあります。使う庭なのか、眺める庭なのか、歩行箇所はあったほうがいいのか不要なのか、植栽の量、樹種など。考えが一つも進まないのです。こういうことは住む人と対話するなかで決めていくものです。具体的な指示はなく“おまかせ”であっても、そこに住む人が定まればその庭の方向性は見えてくるものです。ここがなければ私が方針を決めて作っていきますが、それは住む人の庭ではなく私の庭です。しかし、私はそこに住まないのでどこか所在の定まらないところになるでしょう。庭づくりにおいて、そこには庭師の思いが反映されますが、その思いが住み手と共有できているかは常に考えなければならない大事なことです。

2)その土地のもの

もうひとつ私が大事だと思うのは、その場所特有の事情をよく理解することです。まずは、家の雰囲気。キチッとした家か、柔らかい印象の家か・・。キチッとした家にはキチッとした庭が合うとは限りませんが、庭と家は一体のものなのでバランスは重要です。それと、その土地の状況。周囲の環境、広さ、地形、日照など。こういった環境の条件を取り込んでいくと、その場所特有の庭となり、控えめではありますが個性豊かな庭となっていきます。

何でもない庭

前述のことを踏まえて私は庭づくりに取り組んでいます。排水から始めて、地形、石、植栽と進めていく中で、違和感のあるものを排除していきます。違和感のあるものとは目を引くものです。不自然な地形、変な石組。こういうものをなくして、あるいは目立たないようにと色々苦労していくと、これといって目の定まらない庭になっていきます。これを自然な雰囲気の庭と評価してくださるのが私にはとても嬉しいのですが、私自身はこっそり「何でもない庭」と呼んでいます。色々と苦労して取り組んで、最後にようやく何でもない普通の庭ができたと。こう思えたときが、私なりの完成のポイントではないかと思っています。

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住宅の庭 T邸(奈良市)


# by tsuchiyasakutei | 2015-06-03 20:25 | 通信
先日のこたつ茶会は屋内での冬の楽しみを幾つか用意しましたが、先週に屋外での冬の楽しみを味わってきました。大峯山系への冬の登山です。
朝5時に奈良を出てテント1泊で弥山(標高1895m)登頂を計画。天川村役場(標高607m)から歩き始め最初は森の中の急斜面を登ります。まばらだった雪景色も1000mを超えるあたりから見渡す限り真っ白となり随分と寒く、樹氷も観察できました。
冬の楽しみ_f0355473_17382276.jpg
小枝に吹き付けられた雪が重なっています


雪山は道が消えているのでルート取りには注意を要しますが、その雪ゆえに見ることの出来る景色があります。それはきれいなもので、美しいと言ってもいい。でもそれだけではない怖さを感じます。少し風が強く吹いたり、雪が降れば景色どころではありません。人にとって厳しく、危険な場所へと様変わりするのです。
自然の圧倒的な強さの中で非力を感じつつ、でも一歩一歩に自分を確認しつつ歩を進めます。
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先行するDさん

景色に見惚れすぎたという訳でもないのですがゆっくり歩いていたら登頂はとても無理ということになり、早々にテントを張って宴会です。酔いも進んできて「じゃあ二軒目に行こう!」ともいかず、身動きのとれないテントの中で楽しい時を過ごし、就寝。風の音に不安を感じながらもいつしか熟睡。翌朝は定番のラーメンを食べて下山しました。
天河大弁財天社にお参りして温泉へ。湯の中で幸せをしみじみと味わいました。
冬山は怖いけれどそれゆえに何か覚醒されるものがあります。

# by tsuchiyasakutei | 2015-02-08 17:46
2日間のこたつ茶会を無事に終えることができました。
初日はほぼ満席。2日目は余裕ありましたが平日ならではのお客様を迎え楽しい会となりました。
参加して下さった方々には改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
こたつ茶会を終えて_f0355473_23083980.jpg
お茶には決まり事が多くあります。特に作法がうるさいので慣れないと堅苦しさばかりでお茶の味もわからないようなことがあります。
でも、それではつまらないので、その決まり事をなるべく取り去って、ただお茶を楽しむ場としてこたつ茶会を開かせていただいています。
このような茶会は様々な人が来て下さり、とても楽しいのでまた機会があれば開きたいと思っています。
また、これとは別に正式な茶室での茶会もやりたいと考え始めています。
時には少し襟を正すような場があってもいいのではないかと。
おいおい考えていきます。


# by tsuchiyasakutei | 2015-01-28 23:10 | 茶道
冬の楽しみと言えばなんでしょうか?
まずは食が思いつきます。そして冬のスポーツ等も浮かんできます。
でも、もっと身近で当たり前の生活にも楽しみは多くあります。
その当たり前の冬の楽しみを幾つか用意して年始に「こたつ茶会」を開きます。
今回で二回目の開催。
「こたつ茶会」が冬の楽しみの一つとなりますように。

日時:H27.1.18(日)、19(月) 11:00~17:00
場所:空櫁(奈良市高畑)

今回は予約優先と致します。




# by tsuchiyasakutei | 2014-12-23 22:01
今年は紅葉がとてもきれいです。モミジ、サクラはもちろんですが、紅葉としてはあまり注目していない樹種まで黄葉して彩り豊かな秋です。
なぜ今年はきれいなのか?聞いたことのある話では、寒暖の差が激しいほうが良い、とか水が大事で足りないと葉が茶色くなってしまうとか・・。でも、今年は秋が長く寒暖の差が激しい訳でもなく、秋晴れ続きで雨が多いともいえません。
何故か? 庭師仲間の「庭づくりかま田」の鎌田君がいうには夏の酷暑がなく木が元気なのではないかと。確かに今年の夏は台風続きでさほど暑くもなく雨が多かった。落葉樹はもともと冷涼な気候を好むので、今年の気候が落葉樹にとっては過ごしやすかったのかもしれません。以前、信州の紅葉を見た時にその鮮やかさに驚いたことがあります。同じ赤や黄色で同じ色には見えなかった。落葉樹にとって信州の気候は丁度合いますから木は元気なはずでその元気が紅葉の源かもしれません。
どうも感覚的な域をでない考察ですが、本当のところは木に聞いてみないとわかりません。
今年の紅葉_f0355473_11424722.jpg
これはアカシデ。掃除はしばしお預け。


# by tsuchiyasakutei | 2014-12-01 18:46

自分なりのお茶、そして現代のお茶って、どんなだとしっくりくるだろうか?


by 土屋裕
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